「閉校に寄せて」 昭和34年度卒業 林 美智江

「閉校に寄せて」

 

 中学生になって一番の変化は自転車通学になったことです。小学生時代は通学距離が長く、体も小さく体力がなかった私は毎日の通学が大変で帰宅するやいなや床に入り体を休めていました。また体育の授業では見学ばかりでした。

 自転車通学になり、体力もつき欠席が少なくなったことはどんなに嬉しかったことでしょう。また教科担任制になり、先生方の個性あふれる授業に興味深く取り組めました。体育のテストでは実技面では点数が取れないので保健教科で挽回したく保健を懸命に勉強しました。

 1年生の時に部活動を見学する機会がありました。3年生が投げた強いボールが男の子顔面に当たり眼鏡が割れてしまいました。そのことがずっと脳裏にあり、今、思うとけがの予防、健康管理に携わる職業に繋がっていったのかもしれません。

 またこんな思い出もあります。3年生の9月(1959年)の土曜日、担任の先生が今まで見たことのない表情と声で、高校受験について叱咤されました。反省しながら下校した夜、猫が座敷や居間を1時間ほど休憩しないで走り回っていました。その落ち着きのない様子を見て父が「堤防が切れるかもしれないから大切な物を2階に上げろ」と言いました。急いで教科書、アルバムなど必要な物はほとんど2階に上げました。戸間へ入ってきた、ひたひたという水の音を聞いたと思うとあっという間に天井近くまで浸水してしまいました。猫は本能で予知したのでしょう。あの伊勢湾台風です。その後私は縁故疎開をしましたがクラスのお友達は集団疎開をされ、3ヶ月以上会えなくなりました。

 中学校は令和6年度末で閉校になります。「十中 十中 十四山中学校」と成人式で合唱したのが最終になりました。多くの生徒を送り出していただき感謝です。

 

林 美智江